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夏合宿個人発表③ 〜サブサハラアフリカの母子保健問題〜

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サハラ以南アフリカの母子保健について

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10代で妊娠し、生き抜くカメルーンの少女たち(画像

http://www.huffingtonpost.jp/2015/03/25/paolo-patruno-photo-series_n_6936506.html

サブサハラでの出産の現場を捉えた写真が美しい

http://www.huffingtonpost.jp/2015/04/04/paolo-patruno_n_7002928.html

 

☆世界最大の格差、母子保健

先進工業地域と発展途上地域、とりわけサハラ以南アフリカの間には様々な格差が存在する。その中でも最大の格差だと言われているのが、母子保健分野におけるものだ。

実際、日本の幼児死亡率が3/1000[人]であるのに対し、同数値が1番高い南アフリカのアンゴラでは167/1000[人]となっており、約56倍高い。(2013年ユニセフ調べ)また、1年間に死亡する乳幼児のうち約4割が新生児のうちに死亡しており、その数は世界の新生児死亡の38%を占める。死亡原因の約半数は肺炎、下痢、マラリア、HIV/AIDSなどの感染症だ。これらの根本的な原因としては、慢性的な栄養失調が挙げられる。

親がわが子の健やかな誕生と成長を祈る気持ちはいつの時代も、どこにおいても変わらない。しかし、サハラ以南アフリカの多くの地域では今なおそのようなささやかな願いさえも叶わないことが多いのである。

命の危険にさらされるのは子供たちだけではない。先進工業地域の多くでは、妊産婦死亡率は10以下/10万[人]だが、サハラ以南アフリカの国の多くは300~1360/10万[人]と非常に高い。同地域においては、妊娠・出産は文字通り「命がけ」の大仕事なのである。妊産婦の死亡原因のランキングは以下のようになっている。

  • 出血多量          34%
  • 敗血症・感染症       10%
  • 高血圧症          9%
  • ★HIV/AIDS         6%
  • ★貧血           4%
  • 分娩停止          4%
  • 危険な方法による中絶    4%

•   その他           30%

★印のついている事項はアフリカ特有の主原因だといえる。全エイズ患者の91%がサハラ以南アフリカにいるから、また貧血はマラリアにより引き起こされる場合が多いからだ。

ここまで、サハラ以南アフリカにおける母子保健の過酷な現状について近年のデータを用いて紹介してきた。しかし、筆者が本当に伝えたいのは、この現状は打開可能だということである。特に、妊産婦の死亡については妊娠中から出産時、産褥期にかけて適切な医療的ケアを施すことができればほとんどのケースにおいて予防可能だと言われている。

しかし、サハラ以南アフリカの多くの地域では2015年までのMDGsにおける重点的な取り組みがあったにもかかわらず、幼児・妊産婦死亡率は思うように減少していない。それはなぜだろうか?

 

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☆本当の問題は何か

幼児・妊産婦死亡率が減少しない直接の原因は、妊娠中・出産・産後(赤ちゃんにとっては新生児期・乳幼児期・幼児期)にかけての継続的かつ包括的な医療ケアが不十分であることだ。では、このことの実現を妨げている間接的な原因は何だろうか。道路などの交通インフラの不足、医療従事者の人数不足、近隣の医療設備の不足、経済的問題…etc.が挙げられるが、一番大きな障壁となっているのはコミュニティや家族全体の医療への意識である。妊産婦や幼児の死亡率が特に高い農村部では、彼女たちの身体に何らかの異常があらわれたとしても、本人たちや周囲の人々に知識がないため病院へ連れて行く必要があると分からない場合や、家族・コミュニティの中で立場が弱いため本人が異常を訴えたとしても受け入れられない場合が多いのだ。さらに、医療費の助成を受けられるとしてもそれを知らず、受診を断念してしまう人もいる。

 

☆母子手帳の活用

このような状況を改善する為には、妊産婦とその家族に妊娠・出産・子育てに必要な医学的知識・関連する社会制度に関する知識を提供する必要がある。それを果たすために大きな活躍が見込まれているのが、日本ではほぼ100%普及している母子手帳だ。これを導入することにより母親や家族をエンパワメントすることができ、先にあげたような継続的かつ包括的な母親と子供の健康管理が実現できる可能性が高まる。また、医療従事者間でも出生時の情報、病歴、予防接種の確認、栄養状態等の情報を共有することが可能になる。実際、母子手帳の普及率70%のケニアではエイズの母子感染防止に役立っている。このように、母子手帳は各市町村でつくられるため、地域の状況に合わせた内容にして役立てる事ができることも利点の一つだ。

しかし、一番支援を必要とする農村部ほど妊娠・出産の際でも病院へ赴かないことが多いため母子手帳を配布できないこと、また、配布しても文字が読めなければ情報を得られないことなどが欠点として挙げられる。これらを考慮すると、医療従事者などによる家庭への定期的な訪問、ワークショップ開催などで全世代に包括的に働きかけることが必要だと考えられる。

 

 

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←ケニアの母子手帳

 

☆レポートを振り返って  ―開発に携わるうえで忘れてはならないこと―

今回のレポートで、筆者はコミュニティ全体の意識改革の必要性について述べた。しかし、これはアフリカの人々の価値観に違う地域の人間が少なからず介入するという事だ。人々の生死観や根強いジェンダー差別が低い母子保健水準の根本的原因となっていることは確かである。しかし、それらも彼らの社会の中で文化的・社会的文脈を持っている。だから、コミュニティ外の人間が安易に糾弾するべきではないということを忘れてはならない。また、開発について考えているとアフリカの後進性やネガティブな側面にばかり目が行きがちになってしまうが、アフリカにもポジティブな面は沢山ある。それらを知らずして開発を試みる事は、その良さをつぶし、しいては社会全体をも破壊しうる原因となるのだと改めて自覚した。アフリカを多角的に学ぶためにも、もっと地域研究的アプローチが必要である。

 

参考文献

1.JICAボランティア – 国際協力機構

www.jica.go.jp/volunteer

1.チャド – 健康状態 – 妊産婦死亡率

http://jp.knoema.com/atlas/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%89/topics/%E5%81%A5%E5%BA%B7/%E5%81%A5%E5%BA%B7%E7%8A%B6%E6%85%8B/%E5%A6%8A%E7%94%A3%E5%A9%A6%E6%AD%BB%E4%BA%A1%E7%8E%87

  1. FNSチャリティ:2012年度支援国「チャド共和国」- ユニセフ・チャド …

www.fujitv.co.jp/charity/report2012/chad06.html

  1. 2012年度支援国:チャド … – unicef.or.jp

www.unicef.or.jp/partner/ex1/fns/base_info_chad.html

  1. 「お母さんの命を守る」国連機関報告書で着実な進展。未だ1時間に33人の妊産婦 …

www.unicef.or.jp/library/pres_bn2014/pres_14_14.html

  1. [PDF]国際保健政策 2011-2015 の概要とポイント

www.jamaica.emb-japan.go.jp/jp/foreignpolicy/JAPAN NEW…

  1. ニュース&トピックス: 母と子の命を守るEMBRACEモデル: …

jica-ri.jica.go.jp/ja/topic/post_170.html

  1. 図表I-2 EMBRACE(Ensure Mothers and Babies Regular …

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hakusyo/10_hakusho/zuhyo/zuhyo1_02.html

  1. プロジェクト概要 | 保健医療 | 事業・プロジェクト – JICA

www.jica.go.jp/activities/issues/health/embrace/outline.html

WHO| Maternal mortality

http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs348/en/

  1. PDF]母子保健事業における 母子手帳活用に関する研究 ―知見 …

http://open_jicareport.jica.go.jp/pdf/12079828.pdf

  1. [PDF]*140225 論集2013 print!

www.africakenkyukai.org/2013_Thesis_Kanda.pdf

1.GOAL4 : 子どもの死亡率を減らそう | MDGs in …

www.undp.or.jp/mdgsafrica/category/goal4

1.          [PDF]2 国連ミレニアム開発目標報告

www.unic.or.jp/files/MDG_Report_2013_JP.pdf

  1. [PDF]以下の図は、I PF の取り組みと性と生殖に関する健康と権 …

www.ippf.org/jp/sites/default/files/ticad_lf_8.pdf

  • ナイジェリア母子保健強化プロジェクト

www.huhs.ac.jp/index.php/examinee/1165.html

  • 第32回お母さんと赤ちゃんを救うために・アフリカ母子保健…

www.jica.go.jp/tokyo/enterprise/report/report32.html

  1.   日本の母子手帳を変えよう‐ケニア:アフリカ大陸にも母子手…

mamasnote.jp/sekai/kenya

  1.  [PDF]リベリアの母子保健
  • 世界の妊産婦死亡数減少も、いまだ対応遅れWHO報告書…

www.afpbb.com/articles/-/3014284

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