African Column

鉄道敷設のフロンティア、アフリカ

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久々のアフリカコラムです!

今回はアフリカの鉄道について。

 

人やモノの移動を容易にする交通機関には様々なものがある。中でも鉄道は日本人、特に都市部に住む人にとってはなじみ深いものではないだろうか。東京に住んでいれば、縦横無尽に張り巡らされた鉄道網にお世話にならない人はいない。しかし、世界では必ずしも鉄道はメジャーな交通機関とは言えない。今回はアフリカにおける鉄道事情をお伝えしようと思う。

 

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街並みの中を行くドイツ国鉄の列車 ハンブルク市内 2016年2月

 

個人的に鉄道が好きで、旅行に行くとこのように乗った列車の写真を撮ったりするのだが(この記事で使われている画像は全て自分で撮影したもの)、残念ながら今年2月に訪れたルワンダではそもそも鉄道がなかった。他のアフリカ諸国にもMPJ Youthは訪れるが、研修旅行で鉄道に乗ったという話は聞かない。やはり、人々の”足”としての鉄道にはなじみがないのだろうか。

 

さて、都市交通の一つとして地下鉄が挙げられる。現在アフリカ大陸において地下鉄が営業している都市はたった2都市で、北アフリカのカイロとアルジェである。ちなみに日本で地下鉄のある都市の数は、9都市である(札幌、仙台、東京23区、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡)。アフリカと日本の、人口規模および面積の差を考えればアフリカの地下鉄の少なさが際立つだろうか。地下鉄の建設は、高度な技術を要し、その建設費も高額である。住民の購買力が高く、頻繁に利用するような都市でないと採算が取れない。確かにアジアを見てみても、地下鉄は先進国に多い。そして、地下鉄に限らず鉄道全体としての短所は、初期導入コストおよび維持コストが高い点にある。

 

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地下区間から出てくる東京メトロ東西線 中野駅 2010年10月

 

従って、アフリカにおける鉄道整備は決して十分とは言えない。南アフリカを除いたサハラ以南のアフリカの鉄道路線の総延長は5万6000キロメートルであり、これは世界の路線総延長のわずか2%に留まる。(BTMU Global Business Insight 2014. 12) なお、日本の路線総延長は2万6000キロメートル (CIA the world fact book 2006) であるから、あの広大なアフリカ大陸に長さにして日本の二倍強しか鉄道はない。その鉄道路線も植民地時代の設備を使用しているなど老朽化が進むが、依然として整備は遅れている。交通インフラの整備に尽力しているアフリカ諸国でも、高額のコストがかかるとして鉄道の開発は後回しにされてきた。営業している鉄道も、快速性が求められる旅客輸送には不向きなため、専ら貨物輸送が中心となっていることが多い。ましてや高額の維持費が必要な地下鉄などの都市交通は採算がとれない。そんなわけでアフリカの都市を旅しても、我々が鉄道に乗って移動することは少ないのだ。

 

日本でも貨物輸送は盛んである。 富山市内 2010年8月

日本でも貨物輸送は盛んである。 富山市内 2010年8月

 

しかし、近年その状況に変化が見え始めた。それは中国の進出である。アフリカにおける中国の進出は多岐にわたるが、その中でもインフラ整備に対する巨額の投資が目を引く。この記事ではエチオピアの首都、アディスアベバに新しくできた鉄道を例にとってみたいと思う。

 

2015年9月、アディスアベバの新しい都市交通システムとしてアディスアベバ・ライトレールが開業した。ライトレールは、簡易な設備による低コストな鉄道システムである。日本では富山市の例が有名である。定義は諸説あるようだが、基本的には路面電車を想起して頂ければ大丈夫である。ヨーロッパの都市で見るようなトラムに近いだろうか。路面電車と違い、道路交通をそれほど阻害しないが、通常の都市鉄道よりコストが低い点が一般的には特徴とされている。

 

富山ライトレールの列車 富山市内 2010年8月

富山ライトレールの列車 富山市内 2010年8月

 

もちろんアディスアベバ・ライトレールはアフリカ大陸で初のライトレールである。このライトレール建設に際し建設を請け負ったのは中国中铁股份有限公司(China Railway Group Limited、中国中鉄)という建設会社である。このライトレールは市街地の一部で高架や地下になっており、建設には単に線路を敷設するだけでなく高度な技術が要求された。また、現在の運営には深圳地铁(Shenzhen Metro、深セン地下鉄)がEthiopian Railway Corporationと共同で携わっている。開業当初は中国人乗務員が乗車し、現地会社の職員に教えていたという。そして何より、このライトレールの建設資金の85%は中国进出口银行(中国輸出入銀行)が出資している。この中国輸出入銀行は、中国政府全額出資による投資銀行である。なお建設費用は概算で4億7000万円と見積もられているから、どれだけ中国政府がアディスアベバ・ライトレールに出資したがわかるだろう。言ってみれば中国の包括的な支援によって、このライトレールは開業したということだ。

 

建設から運営に至るまで中国の支援を受け、現在アディスアベバ・ライトレールは目立った問題点もなく運行しているようである。このような官民一体となった包括的な援助は、資金力及び技術力の不足する途上国にとっては極めて魅力的だろう。中国は、21世紀に入り”走出去”と呼ばれる積極的対外進出を軸にした経済政策を採り、この一環として多額の対外投資によって途上国へのインフラ輸出を進めている。インフラ輸出によって、途上国内に基盤を持って優位性を増す、貿易摩擦の解消と関係強化等の利点が見込まれる。このような視野から中国は積極的にアフリカにインフラ輸出を行っている。一方で、日本のインフラ輸出は少なくともアフリカ諸国においてはあまり存在感がない。開発支援としての道路整備や水道管の設置などJICAを中心として高い評価を受けているが、鉄道インフラの輸出については後塵を拝している。アフリカ地域でも今後の都市人口の増加と都市計画の見直しによって、都市交通、ゆくゆくは都市間交通に鉄道が用いられる可能性は十分にある。アフリカの鉄道の発展は、日本の開発援助、支援という文脈に限らず、都市開発や製造業の発展等様々な局面で重要なファクターとなるものであり、注目していきたい重要な事項であろう。

 

 

 

 

参考資料

中国のインフラ投資は加速するか(みずほ総研、2015) http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/world/info/cndb/economics/insight/pdf/R208-0116-XF-0105.pdf

中国建設によるアフリカ初の「ライトレール」、エチオピアで開通=中国メディア(exciteニュース、2015)

http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20150925/Searchina_20150925041.html

中国轻铁提升埃塞百姓幸福指数(新华网新闻,2015)

http://news.xinhuanet.com/world/2015-10/05/c_1116742185.htm

Addis Ababa’s modern light railway is big infrastructure boost(BBC NEWS、2015)

http://www.bbc.com/news/business-34549253

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