2017/12/3 政治班勉強会 後編

https://www.agora-parl.org/news/tanzania-parliament-session-set-start

今回は12/3に行われました政治班勉強会の後編をお送りします。

前編の内容をおさらいしておくと,

・タンザニアの議会ではCCMという政党が大多数を占めている。

・それに関連してCCMと国家の癒着という問題がある。

・解決策として,政党制度化理論(PSI)を取り上げる。

・これは,政党が制度化を進めることで影響力を高めることができるとする理論。

・制度化の指標を出した論文もあり,タンザニアについて見ると与野党でスコアに大きな開きが見られる。

・このスコアを高めるように努力すれば,本当に制度化が進むのか?

ということでした。制度化のスコアを出した論文の表は下に再掲いたします。今回はスコアを高めることが制度化の実現につながるという主張の誤りを指摘するところから入っていきます。

タンザニアの各政党についての制度化の指標(Basedau, M., & Stroh, A. (2008)より)

タンザニアの各政党についての制度化の指標(Basedau, M., & Stroh, A. (2008)より)

 

まずRoots in Society は独立期からの政党の持続年数を反映しています。すると,CCMが高得点を取っている要因の一つは,複数政党制を採用するだいぶ前から単独政党として存在していたからですね。またAutonomyについては,他の政党が国家により政治的に制約を受けているのに対してCCMは国家と一体化しているため高い自治が認められる,というのが原因として挙げられると思います。Level of Organization は団体構造の複雑さだけでなく,物的資源の量や支持層が全国にどれだけ及んでいるかといったことも評価されてスコアが出されています。なので,CCMは議会で大多数を占めているゆえに巨額の政党助成金(全政党への合計のうち85%)を受け取っているためリソースに富むだけでなく,複数政党制移行前にアフリカ社会主義として知られるウジャマーという政策が農村部でも評価されて全国規模の支持基盤を持っているために,この項目では他の2党とは大きな差をつけています。

 

このスコアを高めるよう努力すれば良いのだという議論のどこに落とし穴があったか,もうわかっていただけたと思います。政党の影響力を高めるためには政党制度化を進めれば良いというのが大前提でした。そこで,制度化を進めるためにはこの指標を高めればよいのだとしましょう。CCMの例で見てきたように,指標を高めるためには第一党となればよいのでした。

あれ?これだと政党の影響力を高めるという最終目的が手段になっていませんか?もちろん,CCMだけについて見て第一党であったから高い値が出たというだけでは,高いスコアのためには第一党となることが必要とは言えませんが,現にAutonomy やRoots in Society についてはCCMが第一党として存在する以上他の政党は手も足も出ないというのが現状ではないでしょうか。という訳で,ここには循環論法があったのです。

これについては,質問のときに指摘されて初めて気づきました。というのも,この指標の説明をしてスコアの差の原因について考察するところまではしたのですが,このスコアを高めることが制度化につながると主張したつもりはなかったからです。代わりに制度化に向けた実践的な行為として何が考えられるのか考えてみました。

 

制度化への実践的模索

実際にどんな改善が制度化に向けて考えられるのでしょうか。これは非常に難しい問題なのですが,一つ私からも言えるものがあります:政党のホームページをもっと整備したらどうでしょうか。

 

CUFは英語のホームページがありポリシーも載っているようですがChromeでは開けず,また一部のページにアクセスしようとすると”セキュリティ証明書の有効期限が 567 日前に切れています。”と言われてしまいます。CHADEMAはブログはあるのですがそこにはポリシーが明確に見えてくるようなページは見つからず,またCCMの例だとホームページがスワヒリ語しかなく英語での情報はないといった次第です。以上が議会に議席をある程度持っている政党についてですが,議席のない政党の中には方針がすぐにわからないどころかホームページすらないものもあります。ホームページを持ち,世界の人が読める言語で情報を発信していくことが,結局は政治だけでなく投資・援助・開発につながってくるのだと思います。なので,まずはこういった状況を改善することから始めるのも手なのではないでしょうか。

 

他にも制度化の実践として改善点はいくつかあるはずだと思います。今回の勉強会では取り扱うことができなかったのですが,日本の政党の例を見るのも面白いのかなと個人的には考えています。タンザニアでは現在1と4分の1+6分の1政党制(CCMを1としたときCHADEMAは1/4, CUFは1/6, この野党2党を合計すると1/2)とでも言えるような数ですが,これは戦後日本が1と2分の1政党制と言われてきたこととなんだか似ているような気がしますね。この時代の日本の例を参考にして制度化を進めることもできるのかなと考えてしまいます。しかも,これは余談になるのかもしれませんが,現在衆議院を与党の自公で313/465占めていて,計算すると67%となるのですが,実はこの値って,冒頭でボンッと出した現在のタンザニアの国民議会に占める与党CCMの割合252/366 = 69%にとても近いんですよね。こういったところから,日本とタンザニアの政党政治について比較してみるとまた新しいアイデアが生まれてくるのかもしれません。

 

参考文献

  • Raphael, C. (2010). Political party institutionalisation in Tanzania: a state project?(Doctoral dissertation, University of Dar es salaam).
  • Basedau, M., & Stroh, A. (2008). Measuring party institutionalization in developing countries: A new research instrument applied to 28 African political parties.
  • 外務省 (2016). 「タンザニア連合共和国(United Republic of Tanzania)基礎データ」http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/tanzania/data.html (閲覧日:2017/12/01)
  • Morse, Y. L. (2014). Party matters: the institutional origins of competitive hegemony in Tanzania. Democratization, 21(4), 655-677.
  • Sanches, E. R. (2014). Explaining party system institutionalization in Africa: from a broad comparison to a focus on Mozambique and Zambia.
  • 織完. (1971). 日本における政党の制度化–神奈川県会議員に関する事例研究 (現代日本における政治態度の形成と構造). 日本政治学会年報政治学, (1970), 68-90.

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