アフリカンコラム 「アフリカのことわざ」
こんにちは!東京外国語大学1年の神山と下山です。
突然ですが最初に、アフリカのある言葉を紹介します。
「ことわざのない話は塩気の無い料理のようなもの」
この言葉が示すように、実はアフリカでは、会話の中でことわざがとても重要で、よく使われるそうです。そこで今回は、アフリカのことわざを3つ紹介したいと思います。
①「バッファローに追われて木のてっぺんに登るはめになったら景色を楽しみなさい」
このことわざは、ピンチに陥ったとしても、その状況を楽しむ余裕があれば乗り越えられるという意味です。バッファローはサハラ以南に生息する水牛です。おとなの雄は体長3mにもなり、通常100頭余りの群れで行動するため、追われると逃げるしかなく、焦って木に登ったのでしょう。このコロナ禍でも、今できることを最大限やりたいと思わせてくれるようなことわざですね。アフリカの大らかな雰囲気と自然がよく表れているようにも感じられます。
②「ついていないときは、熟したバナナさえあなたの歯をひっこ抜いてしまう」
悪いことや、不運なことは連続して起こるものだということを表しています。日本のことわざでは似たようなものに「泣きっ面に蜂」などがあります。①のことわざも②のことわざも、真面目で勤勉と言われる日本人にとっては、たまに思い出すと心が軽くなるかもしれません。
ちなみにバナナは、アフリカ東部などの一部の地域で主食として食べられています。料理としてよく使われるのは、プランテンバナナという東南アジアから伝わったバナナです。日本でよく売られているバナナのように生で食べるのではなく、火を通して食べるそうです。
③「早く行きたいならひとりで歩いてください。遠くまで行きたいならほかの者と共に歩いてください。」
こちらは「ひとりではできないことも、みんなで協力すれば成し遂げられる!」と説く一句です。多くの政治家や著名人が、その講演や著書で引用しています。
“ひとり”というのは、もちろん人間一人いう意味で用いられているのでしょう。しかし“ひとり”を一つの民族や一つの地域、一つの国と読み替えることもできるのではないでしょうか。
アフリカには少なくとも3000もの民族が存在すると言われています。その数の多さから民族間の関係は良好なものもあれば、芳しくないものもありました。しかし植民地支配下で、民族の関係性を無視した境界線が引かれたこと、民族のちがいを統治に利用したことなどをきっかけに、関係悪化が進んでしまいました。そして、関係悪化の結末として数々の悲しい出来事が引き起こされた歴史をアフリカは持っています。現在でも民族問題の改善はアフリカにおける課題の一つとして残されています。
そんな、自分とは違う価値観やアイデンティティを持った人がたくさんいるアフリカだからこそ、遠くの将来まで行きたいのなら、ほかの人々と共に歩むことが必要なのかもしれませんね。また、アフリカにおいてだけでなく、日本や世界において私たち “ひとりひとり” がそのように歩みをすすめられたらとても素敵だと私は思うのです。
このように、ことわざはその国・地域の土地柄や価値観、伝統など様々なバックグラウンドを秘めています。その一方で、私たちはどの国・地域のことわざからも人生の訓えを得ることができるのではないでしょうか。アフリカは日本から少し遠いですが、今回紹介したような些細なつながりを通じて心の距離をどんどん縮められたらうれしいですね!
<参考文献>
アフリカのことわざ研究会『アフリカのことわざ』東邦出版2018